うちの息子は三尖弁閉鎖症です。

先天性心疾患の息子との日々を綴ります。

心疾患が判明するまで⑶

2016.1.21

 

妊娠25週。

午前中で仕事を切り上げてくれた夫と待ち合わせ、心臓専門病院へ。とても綺麗で驚きました。

 

まず、個室で先生・看護師さんとお話。

これから診察をして深刻な話になるのに、とても朗らかな雰囲気を作ってくれ、リラックスすることができました。

 

5~6人の医師に囲まれ、エコー開始

産婦人科医と小児循環器医総勢5~6人に囲まれ、約1時間エコーで赤ちゃんの心臓を診てもらいました。

さすが心臓専門病院だけあり、これまで妊婦検診で受けてきたエコーとは比べ物にならない程鮮明な映像でした。

前日の総合病院で、同じように大勢の医者に囲まれエコーをされていたのでこの雰囲気に私は慣れていましたが、夫は少し戸惑ったようです。

あの時は胸が痛くて吐きそうだった、と後から話していました。

 

ぶつぶつとアルファベットの専門用語を話し合いながら進むエコー。

滞りなく進んでいく様子に、

(これは何らかの心疾患があることに間違いないなぁ。)

とぼんやり考え、部屋が真っ暗なこと・前日から気を張っていたこともあり、うとうとしていたらエコー終了。

 

先生「少し話し合うので外で待っていてください。」

と言われ、診察室の外でしばらく待つことに。

さすがに、この時は緊張しました。何分くらい待ったのか全く覚えていません。

(どれくらい重度の心疾患なんだろう。無事に産むことはできるのか。手術はどんな手術をするんだろう。)

様々なことを考えていました。

 

4つの先天性心疾患名を宣告

先生からの説明は以下の通りでした。

 

疾患名

  • 三尖弁閉鎖(ⅡC型)
  • 心室中隔欠損
  • 完全大血管転位
  • 大動脈狭窄・縮窄症

 

産まれてからの治療

出生後すぐ
  • チアノーゼが存在する
  • 心臓から肺へ流れる血流が増加し、呼吸障害・血圧上昇し心不全に陥る
  • 下半身への血流は動脈管に依存するが、出生後自然に閉じてしまう為点滴(プロスタグランジン)により維持する
生後早期(1~2週)
  • 最初の手術を行う
  • 大動脈の形成(大動脈狭窄・縮窄があるので、細いところを切除し太いところ同士でつなぎあわせる)+肺動脈バンディング(大動脈に比べ肺動脈が太いので、肺への血流が多くなりすぎ、結果的に心臓に負担をかけるので肺動脈を縛り、太さを調整する)、又はノーウッド型手術(細い大動脈と太い肺動脈をつなぎ合わせ、肺への血流は人工血管を入れ成り立たせる)
6か月~1歳
  • グレン手術を行う
  • その後、フォンタン手術の前にカテーテル検査をし、場合によってはカテーテル治療(側副血行路のコイル詰め)を行う
1歳半~3歳
  • フォンタン手術(TCPC)を行う
治療を進めるにあたって
  • 一度では治療できず、段階的に手術をする。到達には肺への血流が流れやすいことが条件。
  • 心室型の為、機能的根治術(フォンタン手術)をしてチアノーゼをなくす、或いは減らすことが目標

 

疾患名の多さに驚くも、血流の仕組みを考えると納得

この時は、4つも病名をつけられたことに驚いてしまいました。

 

しかし、よく理解すると当然ですね。

大まかに心臓の動きを説明すると、

全身→大静脈→右心房→三尖弁→右心室→肺動脈→肺→(ここから綺麗な血液)→肺静脈→左心房→僧帽弁→左心室→大動脈→全身

となります。初めに右心房に入る血液は、全身を巡った汚い黒色の血液ですが、肺動脈を介し肺に行くことで綺麗な赤色の血液に交換されます。

その綺麗な血液が左心房・左心室に入り大動脈を介して全身に送り出されるので、本来全身を巡る血液は綺麗なものです。

 

しかし、息子の場合三尖弁が閉鎖し、完全大血管転位(肺動脈と大動脈が左右逆についている)もあるので、

全身→大動脈→右心房→卵円孔(心房中隔欠損)→左心房→肺動脈→肺→(ここから綺麗な血液)→肺静脈→左心房→僧帽弁→左心室心室中隔欠損→右心室→大動脈→全身

とややこしい経路になっているのです。

右心房→三尖弁→右心室の経路がとれないので、身体が危機を感じどうにか血液の流れを止めないように左右の心房間と心室間に穴があける等、造りを変えたんでしょうね。

 

そして、肺を介する前後での前半の汚い血液の時と後半の綺麗な血液の時、どちらも左心房を通るので、綺麗な血液と汚い血液が混じり、血中酸素濃度が下がりチアノーゼが出ます。

このチアノーゼをなくし、心臓の負担を減らして心不全をなくすことが今後の治療の目標です。

 

成功率は70%

あらかじめ、単心室型は段階的にフォンタン手術を目指すことは勉強していましたが、生後すぐの「大動脈の形成」「肺動脈バンディング」「ノーウッド手術」などはちんぷんかんぷんでした。

 

それぞれの術法は前述の通りですが、どれになるかはいざ産まれてみてカテーテル検査をし、大動脈の縮窄・狭窄具合がどの程度か分からないと、決められないとのことでした。

すなわち、

  1. ある程度大動脈の血流がある→狭窄部分を切除し太いところ同士をつなげ、肺動脈は太い主肺動脈をバンディング
  2. 大動脈の血流はさほどないが、一定期間はもちこたえそう→まずは両側の細い肺動脈をバンディングし、血管の成長を待ちノーウッド手術(細い大動脈と太い肺動脈をつなぎ合わせ、肺への血流は人工血管を入れ成り立たせる)をする
  3. 大動脈の血流が良くない→肺動脈をバンディングせず初めからノーウッド手術

難易度は下へ行くほど上がります。

ノーウッド手術は心臓手術の中でも最難関クラスらしく、この時は成功率70%くらいだと言われました。

実際、息子は2.の術式となりました。

余談ですが、3.は医龍2の第一話でやってました。最近この動画を見たら、心臓の専門用語が分かりすぎてちょっとテンション上がりました。

到達目標であるフォンタン手術は、成功率90%を超えるとの話でした。

 

胎児の間は動脈管と卵円孔のおかげで生存可能

ここで不思議に思ったのが、こんなに複雑な心疾患なのに、妊娠中から治療を始めなくて良いのかということでした。

しかし、お腹の中と出生後は血流が変わるのです。

赤ちゃんは産まれて初めて肺呼吸をするという話は聞いたことがあるかと思いますが、体内でも肺を介して酸素交換をしていないのです。必要な酸素は胎盤を介し母体からもらっている為です。

ここで重要なものが、動脈管と卵円孔です。動脈管とは、肺動脈と大動脈をつなげる小さい管であり、卵円孔は左右の心房間の穴です。

この二つのおかげで、息子は三尖弁が閉鎖し大動脈が細くても、綺麗な血液を体に回すことができているのでした。

 

しかし、動脈管は出生後約一日で自然に閉じ肺呼吸をする為肺への血流が必要となり、卵円孔も必要がなければ閉じてしまいます。

その為、出産後すぐにNICUに入り、動脈管を開いたままにするプロスタグランジンという点滴を終日投与することになりました。

又、卵円孔については閉じそうになったらカテーテル治療で広げることになりました。

 

初めて総合病院で心疾患の可能性があると言われた時、

私「こんなに胎動もあって元気なのに、病気なんですか?」

先生「お腹の中にいるから元気なんですよ。」

という会話をしました。この時は訳が分かりませんでしたが、ようやく理解することができました。

 

妊婦生活は特に気を付けることはなく、普通に過ごして良いとのことでしたが、心臓以外にも疾患がないか詳しく調べる為、今度は2泊3日で検査入院をすることになりました。